なぽれぼ

ナポレオンとフランス革命について色々

漫画『槍騎兵マリア』岸田恋

このブログでは、フランス革命とナポレオンを題材にしたものを、書籍、映画、漫画、ゲームなどメディアを問わず扱っていきます。
まずブログで書いて、加筆や修正の上でホームページにまとめていく方針です。

漫画については、単行本化されていなかったり、絶版で電子出版もされるあてがなかったりと、入手困難なものが多いのですが、この情報が同好の士への一助となれば幸いです。

まずは有名どころから。

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・作品情報
『槍騎兵マリア』 岸田恋
コンバットコミック 1号 日本出版社 1985年
28ページ 単行本収録:無し

・あらすじ
1808年11月、スペイン。
主人公マリア・ウォンチニスカは、半島戦争に男装して従軍し、ポーランド軽騎兵連隊に所属していた。
フランス軍マドリードを目指す道中、狭い峠道に大砲を配置された要衝ソモシエラに行き当たる。

・登場人物

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マリア・ウォンチニスカ
ナポレオンの愛人となったマリー・ワレウスカ夫人の従姉妹(ウォンチニスカはマリー・ワレウスカ夫人の旧姓)。
同じくお嬢様のはずなのだが、行軍中に物資調達をかってでるほどの元気娘。

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スタさん(スタニスラフ・ソルジェニスキー? Stanislav Solzhenitsky)
マリアの同僚。
女が軍隊にいることに反対で、最初はお守りを押し付けられたと不満だったが……。

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ナポレオン・ボナパルト
説明不要な僕らの皇帝陛下。

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マリー・ワレウスカ夫人
ナポレオンがポーランドで作った愛人。

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ベシェール
フランス帝国元帥。本編では名前が出てこないが、同作者の漫画『戦争と平和』と同じ外見である(サッシュと胸のグラン・クロワ章が目立つ)ことと、この時スペインにいて、第二軍団司令官を解任され、騎兵予備軍の指揮官とされていた状況から推測。

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クラシンスキー
近衛ポーランド軽騎兵連隊の連隊長。

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コツエトウルスキー
中隊長。マリアとスタさんの直属の上司。
マリアについては「お嬢様の気まぐれ、すぐに音をあげ帰るだろう」とスタさんに世話を押し付けた。
実際は第三大隊長コルィエトゥルスキー(Korjietulski)大尉?


・感想

いずれ紹介する『戦争と平和』同様、岸田恋先生はさすがのナポレオンマニアっぷりです。

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「※タイトルは槍騎兵だけどこの時期近衛第一ポーランド槍騎兵連隊は近衛第一ポーランド軽騎兵連隊とよばれたのでだからこれは軽騎兵マリアなのでした」

おそらく響きの良さから槍騎兵にしたのでしょうが、当時の正式な呼称についても注で言及されています。
この戦闘後、活躍の見返りとして槍の装備が正式化され、タイトル通りの槍騎兵となります。

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「どーしてイギリス製のブラウン・ベスもってるかっちゅーとイギリス人からもらったんです」

スペインゲリラの持っている銃にまで解説が。

ソモシエラの戦いは、概説的な本では名前すら出てこないこともあり、載っていても「ポーランド騎兵の突撃で勝った」で短く済ませているものもあります。
チャンドラーの『ナポレオン戦争』では、ナポレオンは最初に騎兵単独で突撃させ、それが撃退されたために、歩兵と騎兵を連携させて再度の突撃で成功させた、とあります。

最初の突撃で壊滅的打撃を受けた大隊が、マリアとスタさんの上司であるコルィエトゥルスキー率いる第三大隊なので、もしかすると二人は漫画のラストシーン(突撃開始)の後……。
きっと生き残って、成功した二度目の突撃にも参加した、と信じたいところです。
その功績でタイトル通りの『槍騎兵マリア』になったのだ、と。

入手手段ですが、国会図書館の複写依頼ができないか検索してみましたが、コンバットコミックは創刊号がなぜか抜けているように見えました(個別に問い合わせないと確定的なことはいえませんが)。
古書としては、ヤフオクや「日本の古本屋」で数冊確認できました(2011年2月25日現在)。

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コンバットコミックの表紙はこちらです。

また、この号には矢野良太氏による 『モンゴル第44騎兵師団の突撃』という漫画も掲載されています。
1941年11月17日クリン南西の平原、モスクワを目指すドイツ軍とそれを阻むソ連軍の戦いで、ソ連騎兵2000名が十数門の砲列に正面突撃をかけ、榴弾と機銃で全滅するという話です。

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ドイツ軍第106歩兵師団は死傷者ゼロという、戦闘というより集団自殺のような一方的展開だったようです。

16門の砲に向かって騎兵単独で正面突撃するシーンで終わる、槍騎兵マリアと合わせて読むことをオススメします。
いや、マリアたちは生き残ったはずですよ?